永井宏さんのこと
写真は、本屋Titleさんの永井宏「サンライト」発売記念イベント告知ページから(そしてそれはおそらく丹治さんのインスタから)拝借しました。
12 water stories magazine を偶然見つけたのは京都のけいぶん社で、偶然そのとき通っていた学校の先生が授業でその本のことを話していて、仲のよかったクラスメイトが偶然エルマガジンのちいさーなイベント情報で、文章を書くワークショップがあることを見つけてくれて、そんな偶然が重なって自分は永井さんと会うことができました。
ワークショップは、一つのテーマで文章を書いて、最後に参加者の人たちの前で音読をするというもので、手取り足取りというかんじではなく、とにかく書いてみなよ、といきなり書かされてとまどったのを覚えています。自意識が高いわりに恥ずかしがり屋だったので。
あれに似ていたな。自動車教習所で一番最初にAT車に乗せられたとき。なんにも教えてもらってないのに運転していいの? みたいな感覚。
ただ、「自分の机の今日の状態を思い出して、なんにも知らない人に1つずつ丁寧に説明するように書いたらいいよ」的な仰ってて、それはいまこうしてブログを書いたり、メールを書いたりするときにいつも思い出しています。
全員の音読が終わったら、あとはだいたいいつも永井さんが歌いだしてみんなで笑ってときどきごはんを食べにいったりもしました。会場の向かいの、さぬきうどんのチェーン店によく行っていて、いま思うと、そういうところも永井さんのすてきなところだな。気取らずにいられるところ。
長髪で、飄々としていてスタイルがよくて、中途半端に古いクラウンのワゴンに乗っていて、オーロラシューズとジーンズと麻のシャツと帽子がよく似合っていた永井さん。
この秋、永井宏さん関連の書籍が2冊出版されます。一冊は、編集者の丹治史彦さんが編集された永井宏アンソロジーとも言える(永井さん的にはベスト盤というほうが喜ぶかも)、「サンライト(夏葉社)」。“永井さんの残した8冊の本の中から26の散文を集めた”本とのこと。
サンライト 永井宏さんが残したもの
永井宏さんは、美術作家として活発に作品を発表してきた方ですが、同時にたくさんの詩や文章も残しました。 神奈川の海辺の町で暮らしながら作品を作り続け、また自身で「サンライト・ギャラリー」を運営し、「誰にでも表現することはできる」「暮らしそのものがあなたの作品になるんだ」といいながら、たくさんの人に表現することを勧め、背中を押し、励まし続けた人でもありました。 …
もう一冊は今は希少本になっているらしい「マーキュリー・シティ」の復刊本。ジャケットは永井さんの平面作品になっているみたい。永井さんには悪いけど、オリジナルの羽良多平吉さんのデザインがよかったのになあ。
直枝政広 解説執筆:『マーキュリー・シティ』永井 宏・著
永井宏さんの名著『マーキュリー・シティ』がいよいよ復刊!直枝政広が解説を執筆させていただきました。ぜひお手にとってみてください。 美術作家・永井 宏が、音楽・映画・アートへの憧れを、愛に満ちた筆致で綴った1988年の名著、待望の復刊 …
実はもう一冊出ると風の噂できいているのですが、どうやら遅れているみたい。じつはこの本が一番楽しみなんだけど。
永井さんが亡くなってからもう10年になります。あれからいろんなことがあったけど、ときどきなんとなくあの頃の雰囲気を味わいたくて、永井さんのお墓まいりのついでに、オーロラシューズを履いてレンタカーでニールヤングを聴きながら、海沿いをドライブしたりしています。親戚のお墓もにもほとんど行ったことがないのにふしぎなもんだ。
自分はといえば、そんな永井さんにそそのかされて? ギャラリーをはじめたり店をはじめたり、人生が大きく変わってゆくのですが、長くなるのでまた別の日に書く気になれば。
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